スタジアム建設遅れの原因でもある労働者を守る法
「ブラジル・リスク」という言葉がある――。
これは日本企業が進出する際、考慮しなければならないブラジルの問題を指す。中には、複雑な税制、高金利、インフラの未整備、労務問題が含まれる。
ブラジル・リスクはW杯にも関係がある。
日本ではあまり知られていないが、ブラジルの労働者は手厚く法で護られている。
「統合労働法」に加えて、昇給、社会保障、年金、ストライキ、健康安全基準など様々な法律が存在する。これらの法律は、個別の雇用契約より上位にあり、雇用契約で合意した条項を無効とすることもある。
特に日本企業が頭を痛めているのが、「解雇」である。
企業側が「正当に」解雇する条件はかなり狭い。遅刻、無気力な勤務が続いたといって、日本式に解雇すると、すぐに労働裁判所へ訴えられる。訴えを起こす従業員側へは訴訟費用の請求がないことも、訴訟が多発する原因となっている。企業側にとっては、敗訴すれば金を取られ、勝ったとしても裁判費用が嵩む。
ブラジルのスタジアム建設の遅れが未だに報じられている。これは事故による後処理、労働者に対する対策を講じるため、莫大な時間が掛かっているという面もある。
そして、最大のブラジル・リスクは「治安」だ。
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