日本における移籍金ビジネスの現在
2009年11月に施行されたFIFAルールによって契約が満了する選手の移籍が自由化されることになり、当初は日本代表クラスの選手たちまでもが「0円移籍(フリートランスファー)」で欧州に移籍する事例が相次いだ。
それまでの日本国内は、契約が満了となる選手に対してもローカルルールとして基本報酬に移籍係数を掛けることで算出される移籍金が生じていたため、FIFAルールの導入はある意味で移籍の流動化、正常化を促すものであり、クラブに圧倒的に有利かつ“過保護”なルールが国際的ルールへと標準化されたにすぎない。
それから5年が経過した今、Jリーグの少なくないクラブがFIFAルール導入を悲観的に嘆くのではなく、恩恵を受けるような策を練り始めている。
今回は、日本国内の移籍金ビジネスの現状や可能性を解説してもらうべく、青山敏弘(広島)、レアンドロ・ドミンゲス(元柏)、レナト(川崎)といった大物選手のエージェントを務める稲川朝弘氏に話を聞いた。
――FIFAルールが導入されて5年が経過しましたが、Jリーグにおいて移籍金ビジネスの考え方は浸透してきましたか?
「我々エージェント側とクラブ側では全く見解が異なると思います。クラブ側にとっては少し楽になったところもありますが、契約満了になるとフリー(0円)で出て行ってしまうので儲かりません。
どのように折り合いをつけていくのかというところで、それができているクラブとできていないクラブで今、差が出てきています。当然、フリーの選手がたくさん出ることで移籍は活性化します。
ただ、フリーになって仕事に就けない選手も多くなりました。受け皿が多くなったこと自体は悪い話ではないと思いますが、確実に給料は落ちています。ですから、一長一短といったところでしょうか」