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長友佑都 11年前

「今季最悪」、ダービー敗戦でインテル酷評も輝いた攻撃センス。長友の成長と勝ち取った信頼

text by 神尾光臣 photo by Ryota Harada

以前はウイングバックは無理と言われたが…

 相手の守備が堅いことに加え、チームの組み立てにも問題があった。欲しいタイミングでパスを貰えず、思うように攻め込めなかった不利が長友にはあった。だがサッカーにおいてはチャンスを多く作ることと同様に、少ないチャンスを活かして確実に崩し切ることも重要だ。厳しい要求のようだが、フィニッシュワークにはもう少し正確性が欲しかった。

 それにしても、全てのチャンスでベストといえるキックの選択が出来れば、文字通りワールドクラスだ。長友本人は「最後の最後で判断を変えられるような精度」と表現していたが、具体的に課題を割り出し、難しい関門への追求を始めようとしているのだ。このように目標を設定したら、この人は必ず自分を磨きあげてくる。

 振り返ればインテルでの3年半が、正にそういう歩みの連続だった。マイコンのいた3年前、クロスはおろか突破も仕掛けられなかった長友に対し「彼に技術はない」と地元メディアは盛んに叩いていた。ガスペリーニ監督(現ジェノア)のもとで3バックが一時的に導入されたときは「ウイングバックは無理」などと言われていたのである。

 それが今や、むしろ攻撃のほうが目立つ選手に成長してしまった。監督が替わり、自らへの要求も変わる。そんな中で彼は精力的に練習をこなし、タスクを遂行して信頼を勝ち取ってきた。現在インテルで定位置を確保し、プレッシャーの掛かるミラノダービーでも当たり前のように出ている背景には、努力の積み重ねと信頼の蓄積があるのだ。

 他方、今回のダービーで本田が使われなかったが、ミランにおいては『信頼』の蓄積が足りなかったということなのだろう。彼が外された直接の理由は守備戦術の導入だったが、実績のあるカカーと、なにより1月移籍にして4G1Aと結果を出したターラブは残されている。まずは実績を積みなさいというメッセージだったのかもしれない。

 あと残り2試合、そしてW杯へと臨む。直前で新たな課題を見いだし、高みを見据えた長友がどういう伸び方をするのか、引き続き注目したい。

【了】

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