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貧乏でも強豪になれるか?CLに見る、“お金がなくても強かったクラブ”の成功例を読み解く

text by 西部謙司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Ryota Harada

金ではさほど差がつかないJリーグ

 ヨーロッパはリーグ内のヒエラルキーが固定的で、CLの舞台でもそれは変わらない。

 一方、Jリーグはさほどクラブの経営規模が戦績に反映されていない。実質的に外国人枠がなくなっているヨーロッパと違い、補強に金をかければ強くなるとは限らないからだ。

 最大のリッチクラブである浦和レッズは、サンフレッチェ広島から毎年選手を引き抜いて“広島化”を進めているが、まだ広島を上回れていない。

 J1連覇の広島は、比較的お金がないのに強いクラブの筆頭といっていいだろう。

 戦力に大差のつきにくいJリーグにあって、広島は戦術で差別化を図って成功した。このタイプの例としては、過去にイビツァ・オシム監督時のジェフユナイテッド市原(千葉)があった。

 オシム監督の戦術はボルシア・ドルトムントと似ていた。

 マンツーマンによる守備と反転速攻を軸とした戦い方は、いってしまえば弱者のサッカーである。

 ドルトムントとプレーそのものが似ているというより発想が似ていた。相手に思うようなプレーをさせず、運動量や切り替えの速さといった自分たちの土俵に持ち込んで勝負した。

 もっともオシム監督は、相手にプレーさせないやり方から、自分たちがボールと主導権を握るスタイルへの転換を図っていた。しかし、その途上で退任してしまい、後を継いだアマル・オシム監督の時代にチームは失速してしまった。

 アマルもゼリズニチェルを何度も優勝させている監督だが、器量に差があった感は否めない。しかも、一番難しい時期を任されてしまったともいえる。

 小が大を食うところまではいけても、次に自分たちが標的になったとき、強さを保つのは難しい。チームだけでなくクラブ経営そのものが進化しないと、どこかで無理が出てくる。

 貧乏クラブがリッチクラブを食い続けるのには限度があり、どこかで自らがリッチにならないと転落が待っているだけなのかもしれない。

 お金がなくても強くなれるが、強いままでいるにはやっぱりお金が必要らしい。

【了】

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