「剣」があるなら「盾」も必要。コンフェデで露呈した空中戦と玉際の弱さ
イタリア人の監督として「サッカーとはこういうものだ!」と、持論ばかりを押し付けるのではなく、日本のやり方、日本人の特徴、日本人のメンタリティーというものを、コミュニケーションを取って理解しようと努めてくれる。
イタリアのビッグクラブを率いた経験がありながら、そういう謙虚なキャラクターを備えた監督を、日本サッカー協会は選んだ。それは今、ザックが日本人の良さを生かすスタイルを構築している事実と、決して無関係ではないだろう。
正直に言えば、サッカー先進国から来た指導者の中には、日本のサッカー風景やトレーニングの様子を見ながら、小馬鹿にしたような態度を取る人間も少なくない。
どんなに有名でも、「日本人を無理やり俺色のコンセプトに染める」というタイプの監督を安易に連れてくるのは危険だ。『香川の剣』を生かすチーム作りができなければ、日本代表には合わない。
さらにザックの場合は、日本人の良さを生かすだけでなく、自らが持つサッカーのセオリーをうまく日本代表に組み込んだ。
そのキーワードは『バランス』だ。
香川の剣は、機能すれば間違いなく対戦相手の脅威になる。しかし、忘れてはならないのは、相手も『剣』を持っているということだ。たとえ香川の剣が強烈でも、コートジボワールの剣、ギリシャの剣、コロンビアの剣に対して、防御する術がなければ、結果はせいぜい相打ちだ。
日本人らしい長所を生かす“だけ”のイレブンでは、カウンター、球際のパワー、身長差を生かしたセットプレーなどに免疫がなく、あっさりと敗れてしまうだろう。
そこで重要になるのが、弱点を補う『盾』の存在だ。平均身長171センチという小柄な日本人。そして、コンフェデレーションズカップでは強豪国に比べて段違いにボール奪取数が少なく、球際の弱さを露呈した。
さらに空中戦も弱い。このような日本人の弱点をいかに補うべきか? そこには『盾』が必要なのだ。