セリエB昇格を目指すペルージャの今
セリエA時代のホームスタジアムだったレナト・クーリは、海抜494メートルの高さにある中心街の麓にある。今でも公式戦はそこで、また練習も隣のグラウンドで行われる。
城壁の上から見下した時の様子は、セリエAで闘っていた10年前から変わらないように見える。
ただやはり歳月とともに、微妙に様子は変わった。街には「ミニメトロ」なる新交通システムが開通し、中心街から鉄道駅の側をかすめ、レナト・クーリの至近まで一気に行けるようになったのだ。
面倒くさいバスの乗換などはしなくて良くなったのだが、練習場に行ってみると、かつてのようなにぎわいはなくなっていた。
トップチームの練習を見学する地元ファンは10名そこそこ、しかも皆揃って年配である。そのトップチームが練習するメイングラウンドも、ところどころ芝がはげているのが目立つ。
昔の遺産か、施設の規模自体はセリエBでも羨むところがありそうだが、資金繰りの難しさはあちこちに見て取れる。練習を取材に来ていた地元記者の一人は、こう説明した。
「セリエAの時代にはレナト・クーリと同じ質の芝をここに植えてたんだけどね。ファンの数にしてもだいぶ減ってしまったよ。年配の人は多いけど、子供や若い人はAやBのクラブに目が行ってしまう。3部でプレーするというのは、こういう意味さ」
3部クラブの年間収入平均は、Aクラブのそれの50分の1と言われる。そういう状況で、ファンの興味を喚起し経営に結びつけるのは困難を極めるのだ。
ただ、そこまで“落ちた”ペルージャは、一方でファンからちゃんと注目も受けている。地元の記者は常時4人が詰めかけ、カメラマンも1人常駐している。オフィシャルを手伝い、自身も情報サイトを経営する彼は、中田の時代には日本のスポーツ紙とも契約して仕事をしていた。
さらに「中田の時代はもちろん知っとるよ。もっといえば79年、セリエAで無敗記録を作った時からずっと知っとる」という年配のアントニオさんは、昔話を過度に懐かしがることもなくこう語るのだ。
「今のチームはいい。Bにも返り咲けるぞ」