「このレベルのリーグ(セリエA)に辿り着くのが少しばかり遅かった」
――現在のミランで10番を背負うのは本田。歴代の10番たちのレベルに彼は到達できるのだろうか。
「率直に言ってそれは無理だと思う。技術だけでなく、いわゆるイメージする領域とでも言うのか、見えている風景がそもそも歴代の10番たちとは違うのだろう。しかしそれは何も本田のせいじゃない。
あくまでも比べる対象の問題であって、さっき僕が挙げた名(マラドーナやサビチェビッチら)はそのすべてが“サッカー史上屈指”のプレイヤーたちなのだからね。彼らの次元に達することは本田に限らず、誰にとっても至難の業だ。したがって、“到達できるか否か”を問うこと自体が酷なんだと思う。
本田は実に良い選手ではある。しかしこのレベルのリーグ(セリエA)に辿り着くのが少しばかり遅かったと言うべきなのだろう。もちろんロシアのサッカーそのものには最大限の敬意を払いながらも、しかし高いレベルすなわち欧州屈指のリーグとまでは言えないはずだからね。
その上で、今現在の本田を評する上で最も留意しなければならないのは、他ならぬミランというクラブ内部が過去30年で最悪とされる混乱に苛まれているという点だよ。もうあと2・3年でも早ければ彼はまったく違った環境下でその才能を発揮できたのではないか。もっとも、2・3年前のミランに彼が入れたかどうかはまた別の話なのだろうが。
かつてのミランでは、新加入の選手にとって範となる実力者たちが二桁の単位でいた。だからこそ新たに加入してきた彼らはそのベテランたちから有益な助言を必要なときに得ることができていたんだが、残念ながら今はそうではない。
新たに加入してきた者たちがむしろ“救世主”として見なされ、それこそ今のミランがまさにそうであるように、危機的状況に喘ぐチームを救い出す役を担わなければならない。ところが、その救世主たり得るだけの実力を本田は残念ながら持ち合わせてはいない」