真の強豪クラブへ新スタジアムが不可欠
ただ、今の広島にはまだ、爆発的な強さは感じない。連覇中の平均勝点は63.5だが、柏や名古屋が優勝時の勝点は72。昨年、横浜FMや浦和には連敗した事実も「広島が優勝したというより、横浜FMが勝てなかった」という齋藤学(横浜FM)のコメントに、説得力を与える。
栄光を一過性に終わらせず、「強豪チーム」に脱皮するためには、経営基盤の充実が不可欠だ。選手や監督と長期契約を結んでプロテクトできる財政を整えないと、やがて戦力は枯渇する。
そのためには何よりも、観客動員増が不可欠な要素だ。アクセスに問題を抱え、屋根もほとんどないエディオンスタジアム広島での動員は限界だ。昨年、リーグ戦の平均観客動員が前年の1万7721人から1万6209人に減ったのも、ホームゲームの多くが悪天候に見舞われたことが要因。
観客席からピッチまでが遠くてサッカーの躍動感が伝わりにくく、大型ビジョンは故障し、シートも未だにベンチ式がほとんどで洋式トイレも少ないスタジアムに、サポーターの不満も募っている。
クラブは小谷野社長をキャラクター化した「こやのんグッズ」や平日ナイターで試合開始に間に合わない人を対象とする割引チケット「駆け付け割」の販売などの企画を通じ、販促に力を入れる。
だが、根本的な課題解決には、やはり新スタジアム建設が必要だ。千葉はフクダ電子アリーナ移転によって平均入場者数が急増(1万15人→1万3393人)し、年間100万人動員がやっとだった広島カープの観客動員も、新スタジアム建設以降は150万人を超える。
優勝は予算だけでは決まらないが、財政面の成長なくして、強豪クラブへの脱皮はない。大きな転換点とすべく、新スタジアム建設に向けて、クラブは最大限の努力を重ねなければならない。その機運を高める重要な要素こそ、チームの勝利なのである。
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