「この監督のために」。森保監督の人間性が連覇へ導く
森保に懸ける覚悟を示すため、本谷前社長は「たとえJ2に落ちたとしても、森保監督に継続して指揮をとってもらう」と選手やサポーターの前で断言した。トップの強い意志をバックボーンに、森保一は自身の「人間的な力」を最大限に活用してチーム運営に取り組んだ。
まず、各コーチに明確な役割分担を行い、仕事を任せた。もちろん、チーム全体のコンセプトワークは森保監督が行うが、そこまでコーチが様々な意見を戦わし、議論した上で指揮官が決断し、責任も負う。
指揮官の大きな度量によって、コーチングスタッフは活性化した。練習中から元気な声が響き、大きな身振りで指導する。選手個々をつかまえて気づいた細かな部分を指摘し、改善策を示す。指導者たちの活気が、選手にいい影響を与えないはずもない。
指揮官は、主力だけでなく若い選手たちとも時間をかけ、彼らの話を聞き続けた。自分の想いを伝えるだけでなく、選手の想いを丁寧に引き出すことによって現状の把握に生かす手法は、並大抵の管理者にはできない。
そして、2012年の開幕時は「選手の頑張り」を思って涙を流し、2013年の最終節・鹿島戦の前日には「これ以上、頑張れとは言えない」と語りかけるなど、彼の持つ「情」もまた、選手たちの心に火をつけた。
戦術の熟成や守備の整備も連覇の要因ではあるが、どんなに先鋭的な戦術を構築しても、「この監督のために」と選手・スタッフの意志がまとまらなければ、絶対に勝てない。サッカーにおいて大切なのは「何をやらせるか」より「誰がやらせるか」なのである。
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