メッシが『偽の9番』ならば、ラフィーニャやアラバは『偽の2番』『偽の5番』
ところがバイエルンでは、同様の方法をとっていない。正統的なセンターフォワードのマンジュキッチは中盤には参加せず、そのまま最前線の高いポジションを取る。そして前述したようにSBが中央寄りにウイングをサポートし、MFのようにパスを散らす仕事を果たす。
もしくは、ウイングのリベリーやロッベンが中央に入って数的優位を作ることもあるが、その場合はSBがタッチライン際にポジションを取って攻撃の幅を作る。
つまり、いずれにしろ中盤に人を足すためのオーガナイズは、バルセロナでは中央のセンターフォワードの縦スライド、バイエルンではサイドプレーヤーの横スライドという相違点が発生している。
バルセロナのメッシが『偽の9番』ならば、バイエルンにおけるラフィーニャやアラバは『偽の2番』『偽の5番』と呼ぶことができるかもしれない。彼らはSB=タッチライン際の上下動、という従来の常識に当てはまらないポジションを取っている。
アンカーで起用されているラームを含めれば、ペップが指揮するチームでは、3人のSBが中盤的に起用されていることになる。
では、なぜこのようなオーガナイズになったのか? それはアタッキングサードにおける両チーム本来の攻撃パターンから逆算された結果と言えるだろう。
ハインケス時代のバイエルンの攻撃エリアは、左サイド35%、中央26%、右サイド39%。すなわちチームの攻撃の中心は両サイドにあり、リベリーやロッベン(ミュラー)、アラバ、ラームなどチーム内での攻撃力が突出した選手がサイドでプレーしていた。
また、得点パターンに関しては、サイドからのクロスやセットプレー、あるいはカウンターの割合が多く、いかにもドイツサッカーらしい特徴を備えていた。唯一、カウンターの減少を除けば、ペップが指揮する今季のバイエルンも基本的な得点パターンに変化はない。