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Win-Winだった岡崎の獲得。抜群のコスパを誇るマインツの躍進に見る、お金がなくても強いチームの秘密

text by 木崎伸也 photo by Getty Images

Win-Winだった岡崎の獲得。クラブのイメージアップで選手から売り込みも

 ハイデルがマインツと出会ったのは、1991年のことだ。

 マインツは当時まだ2部で、ホームゲームのチケットが売れていなかった。そこで自動車販売業者が買い取り、職員たちが観戦することになった。その中にハイデルがいたのである。

 当時27歳だったハイデルは試合に感動。ボランティアで働くことを申し出て、クラブ経営に参加し始めた。選手獲得と売却は、自動車の仕入れと似ていたのかもしれない。

 徐々に才能を発揮し、気がつけばブンデスリーガを代表するマネージャーになっていた。2006年、マネージャーに専念するために、ついにクラブとプロ契約を結んだ。

 ハイデルは経営哲学をこう語る。

「私たちの最大の目標は、常にドイツ国内のベスト15にい続けること。つまり1部残留だ。そのためには、いかに補強でミスをしないかが大切になる。選手と契約するときは、いくら時間がかかったとしても、とことん考えなければならない」

 ただし、節約だけでは、他クラブの進化についていけない。マインツは競争力をつけるために、投資額を少しずつ引き上げ始めた。

 その象徴となったのが、韓国代表のク・ジャチョルの獲得だ。今年1月、ボルフスブルクからマインツ史上最高額となる5Mユーロで獲得。ハイデルは記者会見で「新たな次元に足を踏み入れた」と興奮しながら語った。

 有望な若手が来てくれるのは、地道な努力によってクラブのイメージがアップした証でもある。シュトルツ会長は「優れた選手が、ついにマインツにも興味を持ってくれるようになった」と喜ぶ。

 岡崎慎司のシュツットガルトからの加入も、その流れのひとつだ。代理人のトーマス・クロートがマインツに岡崎を売り込んだとき、ハイデルは「そのクラスの選手がうちに来てくれるのか!」と喜んだという。

 クロートの予想通り岡崎のプレースタイルとマインツの戦術は抜群に相性が良く、ゴールを量産。Win-Winの移籍になった。

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