「めっちゃ仲がいいですからね」。今もヴェルディがホーム
端緒は、小林自身が認める未熟さ、歯に衣着せぬ率直さが招いたものだが、当時十代の選手に多くを求めるのは酷というものだ。個性の強い選手たちのベクトルを束ね、力を結集できるほど、クラブ自体が成熟していなかった。
「移籍はおれが決めたことだから、どんなふうに思われても構わない。ヴェルディの人たちの期待の大きさは感じていたし、そのぶん苛立つ気持ちもわかる。この先、若い選手が思いきってプレーできる環境をつくってあげるのも自分の仕事だと思っています。
日本はいつかワールドカップで優勝しなければいけない。自分たちの世代で成し遂げるのがベストですが、下から選手が育ってきたら確実に強くなり、その日が近づく」
それでも小林にとって、東京ヴェルディがホームであることに変わりはない。年末恒例、ランドで行われるファミリーサッカー大会には必ず顔を出す。
「おれらの代くらいですよ。15人くらい集まるのは。めっちゃ仲がいいですからね。去年は大会のあと稲田堤でごはんを食べながら、ずーっとサッカーの話。サッカーの話ならいくらでもできるんです。5、6時間いて、そのあとボーリングに行って解散だったかな」
別の日、フットサルをやろうと集まったときは、「おまえら、巧くなってねえな。ほれ見ろ。おれは毎年レベルアップしてるよ」と小林が言い、「うっせえな。こっちにもいろいろあんだよ」と大学に行ったメンバーが言い返す。相変わらず、こんな調子らしい。
「あいつ、同期の連中が大好きなんですよね。ユースのチームメイトは宝のように思っている。だから、そんなふうにちょっかいを出すんですわ」
と語るのは、小林拓也。父である。すらっとした長身で、目鼻立ちや身体つきがよく似ている。祐希の生まれ育った東村山市の居酒屋で会った。