自身最後のゴールも「いたたまれない気がして、喜べなかった」
2012年6月13日、国立競技場。J2第19節、東京ヴェルディ vs FC岐阜戦での出来事がそれを象徴していた。
後半23分、小林は途中出場。左足一閃、渾身のミドルシュートはバーを叩き、こぼれ球を拾った阿部拓馬が倒されてPKの判定。小林は自らボールを拾い、ペナルティスポットに立つ。
シュートが決まり、ゴール裏に向けて走り出しそうになりながら、ふらふら歩いた。西紀寛が、ジョジマールが、阿部が駆け寄り祝福する。小林に笑顔はなかった。表情は強張ったままだった。
「PKの瞬間、自分が蹴るつもりでした。みんなも行けと言ってくれた。気を遣ってくれたんだと思います。10番でキャプテンなのに、あまり試合に出ていなかったので。なんだろう、この持ち上げようとしてくれる感じ、この雰囲気は。かえっていたたまれない気がして、喜べなかった」
自分が望んだことを完遂し、周囲もそれを快く受け入れた。だが、その気持ちはどうしようもなく湧き上がってきた。このときの得点を最後に、小林はゴールネットを揺らしていない。
重責を担うプレッシャーに押し潰された。周囲のサポート不足。チームとしての連帯の欠如。どれもが少しずつ正しく、少しずつ間違っている。ありていに言えば、人間関係のつまずきやコミュニケーションの不具合が歯車を狂わせた。