売られているユニフォームはすべてネイマールのもの
しかし、ブラジルにいるとW杯への熱を感じることはほとんどない。
ぼくは前回2010年大会、そして98年大会期間中、この国に滞在したことがある。ブラジル代表の試合が行われる日は、まるで魔法に掛けられたかのように、通りから人、車が消える。街が死んだようになるのだ。
ブラジル代表が得点を挙げると、街のあちこちから花火が上がり、歓声が聞こえる。その瞬間、街は生き返る――。
ブラジル人はみなで集まって、テレビの前で試合を応援する習慣がある。そのため、W杯が近づくと、応援グッズの販売が盛んになる。
サンパウロには「3月25日」通りという問屋が建ち並ぶ通りがある。合羽橋と上野を足して、猥雑にした一角と言えば理解してもらえるだろうか。
先の週末、この問屋街は黄色と緑色のブラジル代表カラーの帽子、マラカス、そしてユニフォームが並べられていた。しかし、店員によると、「売れ行きが本格的になるのは、これから」だという。
何軒か店を回り、吊されている偽物ユニフォームを手に取ってみると、ほぼ同じ背番号だということに気がついた。
「他の番号は売っていないの?」
ぼくが売り子に声を掛けると、10番を指して、「全て、ネイマールさ」と笑った。
ブラジルでは伝統的に10番は最も大切な番号だ。しかし、「7番」「9番」「11番」など攻撃的なポジションの背番号も人気がある(かつてのロマーリオの11番、ロナウドの9番など)。それが今回はほぼ10番。
偽物ユニフォーム業者もどのような選手が選ばれるのか、確信が持てないのか。あるいはネイマール以外では売れないと踏んでいるのか――。
突出した輝きを見せる選手が、元サントスFCの天才ドリブラーのみというセレソンの状況もいまいち盛り上がりに欠ける一つの要因である。
【了】
関連リンク
ザ・キングファーザー
サッカー好きほど知らない戦術の常識
世界のサッカー応援スタイル
【DVD】みてわかるブラジル体操
【DVD】ヴァモス!ブラジル体操