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クラブが、ペップが、メディアが“待ち望んだ”相手。レアル戦、バイエルンがついに本気を出す

text by 本田千尋 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

マンU戦にはなかったメディアの用心深さ

 2014年4月16日付のSportBild誌では、「Die 10 Wichtigsten Fragen zu Real Madrid(レアル・マドリーに対する10の重要な質問)」としてちょっとしたチャンピオンズリーグ特集を組んだ。

 第1の質問は「マドリーの秘密兵器は何か」というものである。SportBildは「クリスティアーノ・ロナウドでもなく、ガレス・ベイルでもない。細身のアルゼンチン人ディ・マリアである」とした。

 ロナウドが欠場した4月12日アルメリア戦での活躍を受けてのことだが、ロナウドが出るか出ないにかかわらず、主に4-3-3の中盤の3の左を務めるディ・マリアは、ボールの供給源や前線に出向いての攻撃参加等、まさにマドリーの肝と呼ぶべき役割を果たしている。そうして見ると、ペップがその実名も挙げたディ・マリアに対してどういったアクションを起こすのかは興味深いところである。

 引き続きロナウドの怪我の具合について、ベイルに91ミリオンユーロ(約127億4000万円)の移籍金に見合った価値があるかなどの質問が続いていくが、そこには総じて準々決勝にてマンチェスター・ユナイテッド戦を前にしたときにはなかった相手に対する用心深さが垣間見える。メディアとしてもやはりマドリーは「待ち望んだ相手」なのだ。

 それでいてなお、バイエルンが3冠を達成することは現実的なものとする空気が漂っているのも事実である。2年連続の3冠は本来途轍もない偉業のはずなのだが、ペップはそれを夢でも希望でもなく、現実的な目標へと変えてしまった。

 時に神経質なまでに騒がしい面を見せたかと思えば、時に悠然とした自信家として立ち現れる。ピッチの上では夢幻のローテーションとポジションチェンジを見せ、相手、そして観る者の心を惑わす……。ペップ・バイエルンは、人々をまるで巨大な万華鏡の中へと押し込んでしまうかのようである。

 トリックスターとしてドイツの地に立つスペイン人は、レアル・マドリーを相手に今度は何を見せてくれるのだろうか。

【了】

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