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モイーズの成績不振、早期解任でマンUの損失は90億円以上。クラブの偉大なる価値観も崩壊

text by 海老沢純一 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

CL出場権喪失&違約金。わずか10ヶ月で与えた天文学的な金額の損失

 チャンピオンズリーグ(CL)の連続出場を18シーズンで終わらせたことも大きい。放映権や入場料収入、CL関連のグッズ売り上げを合わせれば莫大な損失だ。昨季クラブはCLで約3555万ユーロ(約49億7700万円)の収益があった。

 さらに、6年契約の途中で解任されたとあっては、残りの5シーズン分の年俸を支払わなければならない可能性が高い。今シーズンのモイーズ監督の年俸が590万ユーロ(約8億3000万円)のため、単純計算で41億5000万円もの出費を強いられる。

 CLと違約金を合わせると90億円以上になる。わずか10ヶ月でクラブに天文学的な損害を与えてしまった。

 とは言え、群雄割拠のプレミアリーグでモイーズ以外の監督だったら、4位以内に入ることが可能だったとは言えないだろう。シティやリバプール、チェルシーと比較すると、選手の陣容は明らかに下だった。

 ディフェンスラインに関しては、07-08シーズンに欧州を制し、ファーガソン監督が絶対的な信頼を置いていたエブラ、ヴィディッチ、ファーディナンドは既に下降線を辿っている選手だ。

 フィル・ジョーンズやスモーリングは将来を期待される選手ではあるが、ラファエウやエヴァンスはワールドクラスとは言えず、20代後半で全盛期の絶対的な選手はいなかった。

 中盤ではスコールズが晩年を迎えて以来、課題となっていた攻撃力の高いセントラルミッドフィールダーの補強・育成をファーガソン監督が怠っていた。

 さらに前線では、昨シーズンに「市場に出回っていたから」という理由でファン・ペルシーを獲得した影響もあって、ハビエル・エルナンデスや香川真司が思いのほか起用されず、成長する機会を逃していた。

 実際、リーグ優勝を果たしたとは言え昨シーズンも内容的には凡戦の連続。ファン・ペルシー1人に救われた試合も少なくはなかった。また、モイーズ監督との違いは、格下相手に取りこぼすことが無かったという点だ。これはファーガソン監督の威圧感やカリスマ性がものを言っていた部分でもあるだろう。

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