セレソンより優先されるもの
コリンチャンスはFIFAクラブW杯を二度優勝している、ブラジル屈指の名門である。しかし、この100年以上の歴史があるにも関わらず、自前のスタジアムを所有していなかった。今回のアレーナ・コリンチャンスは全てのコリンチアーノ(コリンチャンスのサポーター)の悲願だったのだ。
ブラジル人にとってセレソンは大切な存在だ。しかし、それ以上に自身の愛するクラブへの愛が優先される。
W杯の開幕戦となるアレーナ・コリンチャンスに“詣でる”のはコリンチアーノだけだ。コリンチアーノ以外の人間は、このスタジアムを冷ややかに見ている。だからこそ、ブラジル国内でさえ批判的な報道は少なくない。
W杯は単なる国際大会ではない。
アレーナ・コリンチャンスが作られた場所はサンパウロ市内東部の貧困地域だった。スタジアムの周囲には道路が整備されている。この一帯は一気に風景を変えることだろう。
そしてコリンチアーノたちは愛するコリンチャンスの選手たちがこのスタジアムで躍動することを楽しみにしている。すでに彼らはW杯後を見据えているのだ。
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