より緻密になっている前線の守備。ドルトムントの例
後方からのビルドアップが進歩するにつれ、前線の守備力が問われるようになった。それがここ数年、はっきりしてきている傾向である。4人×2ラインによる守備ブロックに関しては、90年代にほぼ普及した。現在はその8人の前方の守備がポイントになっている。
昨季のUEFAチャンピオンズリーグにおけるボルシア・ドルトムントを例に、前線の守備をみてみよう。
まず、最初はグループリーグのアヤックス戦。アヤックスは4-1-2-3のフォーメーション、後方のビルドアップに定評のあるチームだ。1ボランチのポウルセンへの配球路を断つことがドルトムントの課題だった。
ところが、ドルトムントは組み立ての要であるポウルセンにはマークをつけず、それ以外のポジションをきれいにマッチアップさせる方策を採った(図3)。
ドルトムントは4-2-3-1だから、普通に考えればトップ下のゲッツェがポウルセンをマークすればいい。センターバックの2人を1トップのレヴァンドフスキがケアすれば、ドルトムントのディフェンスラインに1人の数的有利を作れる。
ただ、この通常の守り方だとアヤックスのフィード力のあるセンターバックが前進してビルドアップの起点になる恐れがあった。そこで、ドルトムントはレヴァンドフスキとゲッツェを2センターバックの前方に立たせ、ポウルセンへのパスコースを遮断している。
この守り方をされると、レヴァンドフスキとゲッツェが待ち構えているのでアヤックスのセンターバックは前進できない。
センターバック間のパスはいくらでも通せるが、それ以外の選手はきれいにマッチアップができていてパスを入れにくい状況。頼みのポウルセンへのコースは消されている。レヴァンドフスキとゲッツェの“立ち方”は絶妙で、入念に準備していたと思われる。
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