守れないFWがいることの危険性
単純に図式化してしまえば、守備側のFWとMFの間へパスをつなぐと、MFとDFの間へもつなぎやすくなり、ここへボールが入れば最後の崩しも容易になる(図2)。
逆にいえば、守備側はFWとMFの間をとられないように、相手の後方のビルドアップをできるだけ制御しなければならない。
ひと昔前なら、FWはセンターバックにプレッシャーをかけ、ボールをサイドへ吐かせれば仕事は終わりだった。ところが、ビルドアップのレベルアップが進むにつれ、FWの守備は重要性を増した。いまや守れないFWがいると、守備組織にかなり深刻な影響を与える事態になってしまっている。
守備側のFWとMFの間の地域を制圧する試みは、古くは72年ヨーロッパ選手権に優勝した西ドイツの例がある。リベロ(センターバック)にベッケンバウアー、MF(ボランチ)にネッツァーというプレーメーカーを起用して、深い位置から攻撃を組み立てた。
この時期の守備はマンツーマンだったが、後方に技術の高い選手を複数配置して起点にするという発想は現代に通じるものだ。
ゾーン全盛期なら、ピルロをボランチに起用したミランの例がよく知られている。守備力主体に選考されていたボランチに、司令塔タイプを使ってビルドアップを飛躍的に向上させた。ピルロの前にもバルセロナにおけるグァルディオラ、レアル・マドリーのレドンドなどの例もあった。
ボランチに攻撃力があるのはいまや当然、センターバックの配球力の高さも不可欠になっている。それも1人だけでなく、スボティッチとフンメルスを並べるボルシア・ドルトムントのように2人というチームも増えてきた。
サンフレッチェ広島、浦和レッズは流れの中でボランチをセンターバックの位置に下げて、フィード力の高いセンターバック2枚の状況を作っている。