カシージャスの存在感
そして、忘れてはならないのがイケル・カシージャスの存在だ。01-02シーズンにグラスゴーで行われたCL決勝レバークーゼン戦、10年W杯決勝オランダ戦に代表されるように、彼はこのようなレベルの試合で常にチームの救世主として君臨してきた。
チームにとっては、ある種の保証とも言える選手だ。厳しい要求を強いられる試合であればあるほど、成果を上げる選手こそがマドリーの象徴、聖・イケルなのである。
マドリー対バイエルンは、アンチェロッティとグアルディオラが仕掛ける戦略・戦術が試合の展開を決めるはずだ。しかしながら、決着がつくのはピッチ内にほかならず、それは芝生の上に立つ選手たちが披露するプレーに懸かっている。
仮想バイエルン戦については、以上の通りだ。ここからはスペインメディアの視点から、現在のバイエルンがどのような位置付けにあるかを記していく。彼らは我々にとっても、マドリー、バルセロナの先を行く、世界の模範と称すべきチームである。
そうなった理由は、昨季にCL、ブンデスリーガ、DFBポカールの3冠を達成しためだけではない。クラブの運営方針が、そのような成功を裏付けているためだ。
バイエルンは過去にクラブに在籍した選手たちが取り仕切るクラブであり、それを基盤として、スポーツ、財政の両面のバランスを取りながら成長を続けている。気難しいグアルディオラを口説き落とした要因も、そこにあったはずだ。
もちろん、健全な財務状況はゲッツェやマルティネスなど、移籍市場で重要な選手を引き入れることを可能とし、この冬にはボルシア・ドルトムントのロベルト・レヴァンドフスキまで手中に収めた。またグアルディオラが受け取る年俸も、1700万ユーロ(約24億円)と指揮官としては世界最高額である。
リーガでは、2強がテレビ放映権収入で恩恵を受ける状況が続いている。だが現在のバイエルンから映し出されるのは、財政面でも経営面でも非の打ちどころのない、真の勝者の姿である。
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