「“労働”を取り除き、“プレー”に回帰」。静かな威厳を漂わせ雄弁に語る
しかし、実際に目の当たりにしたパウル・ブライトナーは、髭のおじさんには違いなのだが、気軽におじさんとは呼べない静かな威厳を漂わせていた。
椅子に腰掛けてインタビューに応対するブライトナーは、幾分身体を反り身にし、胸を張る格好が実に様になっており、鼻はあくまで高く、目はどこまでもブルーに澄んでおり、初めて西洋人を目にした丁髷のニッポン人はその威容にさぞ度肝を抜かれたことであろうよ、などと愚にもつかないことに思いを寄せると共に、あのチャンピオンズリーグ決勝のオープニングセレモニーを担当した人間は、よくこの人にあのコスプレを依頼できたものだと、その担当者の度胸に、妙に感心してしまった。
インタビューは全編ドイツ語ということで、現場では細部まで把握することは不可能であったが、会話のなかで上る固有名詞と時折出てくる英語っぽい単語を繋ぎ合わせると、話の概略を掴むことはできたし、後日頂戴した翻訳文と照らし合わせてみても、そのときの理解に間違いはなかった。
先ず、現在のバイエルン・ミュンヘンが謳歌している成功ついて問われたブライトナーは、「我々はフットボールから“労働”を取り除き、“プレー”に回帰した」という言葉を交えながら、雄弁に我がクラブの現況を語った。
その雄弁さは留まるところを知らない。それはそうだ。なにしろ我がクラブは、今、世界一洗練されたフットボールを世界へ向け発信しているのだから。