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ビッグゲームでの“経験値”で敗れたPSG。「トップ4入りはまだ早い」土壇場で閉じられたドア

text by 小川由紀子 photo by Getty Images , Kazhito Yamada / Kaz Photography

「試合運び」に歴然の差。露呈したビッグゲームへの慣れ

 両監督の思惑はともあれ、「試合運び」という点で差があったのは歴然だ。2ndレグ、チェルシーは開始直後からハイテンポのゲームをしかけてきた。

 それはブラン監督も予想していたことで、前日会見では「それに乗ることなくこちらは落ちついて様子をみたい」と話していた。

 しかし、ピッチ上の選手たちはまんまと相手のペースにはまり、国内リーグではありえない速い展開に「必死にくらいついていく」格好になった。

 それはまるでバスケットの試合を観ているようだった。ラン&ガンを得意とするチームが、オーソドックスなパスゲーム主体のチームを自分たちのペースにはめてリズムを狂わせていく…というような。

 ブラン監督は、サイドラインから必死に「落ち着け!」とサインを送り、そのたびにいったんはボールをキープして落ち着かせるのだが、またすぐに相手にペースを乱される。そんな中でのシュールレの先制点。

 起点はイバノビッチのスローインだが、筆者は目撃していなかったが、近くにいた記者仲間によれば、投げる前にイバノビッチは、ケーヒルとルイスに「上がれ!」とサインを送っていたという。彼らの頭を狙い、ボールを落とさせてゴール前でシュート、というプレーを想定し、見事に実現させたわけだ。

 この先制点がPSGに与えたダメージは大きかった。何より露呈したのは、ビッグゲーム慣れしていないという弱点。シウバ、ラベッシらは平常心を保っていたが、若いベラーツィやルーカスらは慌てふためいた。

 なんとかしようと気負うあまりに空回りする、という悪いパターンで、ベラーツィは失点した直後にシュールレをエリア内で倒し、あわやPKか!? と、PSG陣営を凍りつかせている。

 1stレグでも「ところかまわず動き回って、ディシプリンを欠いた」とブラン監督からダメ出しを喰らったベラーツィは、この試合でも、足下でのボールキープなど、ピンポイントでは才能を発揮するものの「動き」の部分で効率が悪すぎた。

 若気のいたりで、興奮すると突っ走ってしまうメンタルコントロールの稚拙さもある。55分で元プレミアリーガーのキャバイエと交代したが、彼にはまさに、経験が必要だ。

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