綿密な下準備があってこその勝利。「試合で採用した3システムの全てを前日にこなした」
1stレグに2点差で敗れたチームを率いる立場の厳しさは、2ndレグ前日の会見で確認できた目の下のくまからも想像できた。必勝の決意を秘めたモウリーニョの頭脳は、リターンマッチに向けて休むことなく働き続けたに違いない。
キャプテンのジョン・テリーが、「1-0、2-1、3-1と、異なる状況を想定して練習してきた」と明かした通り、綿密な下準備があってこその勝利だった。
当のモウリーニョは、「試合で採用した3システムの全てを前日にこなした」と語っている。基本の4-2-3-1の他、中盤のフランク・ランパードを下げてストライカーを投入するパターンも、更にFWを加えた異例のCF3名による3トップも、全てが予定通りだったことになる。
フルタイムを任されるFWはサミュエル・エトー。試合前には、故障(ハムストリング)からの復帰を「ひょっとしたら」と表現したモウリーニョだが、実際には先発の目処が立っていたのだろう。対戦相手と報道陣を惑わせたこの発言も作戦の一部だったようだ。
静かな立ち上がりも、監督の指示が忠実に実行されたと理解すべきだ。最低2ゴールが必要だったチェルシーだが、先にアウェーゴールを奪われれば致命的。
PSGのローラン・ブラン監督は、「攻撃のポリシーを貫く」とまで言っていた。2ndレグの敵は、ズランタン・イブラヒモビッチという脅威を怪我で欠く代わり、ルーカスが3トップの一角で先発することで、速攻カウンターの危険度が増すとも考えられた。
落ち着いて攻める姿勢を体現していた好例が、18分に投入されたアンドレ・シュールレだ。1stレグでの先発からベンチに回ったシュールレは、エデン・アザールの負傷で訪れた早々の出番に躍起になっても無理はなかった。
だが、23歳のウィンガーは、快足は飛ばしてもむきにはならず、32分のチャンスにパワーではなく精度を優先して先制ゴールを決めた。