「引いた相手も崩せる」。グアルディオラの進化を示す一戦
そして何より、バルセロナがインテルとチェルシーにどんな負け方をしたかは、他ならぬペップ本人が一番良く理解していることだろう。そこで気になるのは「引いた相手を崩すのは簡単ではない」というコメントをペップが、あえて発したことだ。
ともすれば自らの苦手意識をわざわざ口にした格好となったわけだが、こうしたコメントは当然のことながら、対戦相手、そして敵将のデイビッド・モイーズの耳にも入る。これを一つの陽動と見るのは、深読みのしすぎだろうか。
Kicker誌が「バイエルンはバルセロナではない」とし、以前データでも示されたように、ペップ・バイエルンは30メートル以上のロングボールを効果的に組み込み、マンジュキッチという高さを前線に兼ね備えている。
リベリーとロッベンが同サイドでコンビを組めば、引いた相手であれサイドを崩せることはマンチェスター・ユナイテッドとの第1戦で実証済みだ。
ペップがボール支配というスタイルを貫けば、遅かれ早かれCLの舞台でベタ引きした相手を崩さなくてはならない場面に直面するであろうことは、自明の事とも言える。
ペップはバイエルンに移ってきた段階でそのことを既に予測していたことだろう。だからバイエルンを選んだ、とも言えるが、そして引いた相手を打開するための実験を、ブンデスリーガの舞台で続けてきたのではないだろうか。
そして実験の成果、つまり自身の戦術の進化を示すために、あえて「引いた相手を崩すのは簡単ではない」と口にしたのではないか。モイーズに第1戦と同様、自陣に閉じこもりながらのカウンター、という作戦を取らせるために。
バルセロナではないバイエルンは、引いた相手であれ崩し切ることは出来る、という密やかな自信を持ちながら。
ペップの胸の内に、何かが潜んでいるのか。それとも何も潜んでいないのか。生と死とを掛けた一戦のあとに、全ては明らかとなる。
【了】