スタジアムが国民の不満のはけ口になることも
一方で国のこの方向性に疑問を投げる声も少なくない。「反移民」を掲げる極右政党のスウェーデン民主党が2010年の総選挙で初めて政界に進出した。
筆者が7年前にスウェーデンに留学していたころ、同じ寮に住んでいたスウェーデン人が「私たちの払っている税金がなぜ外国人に優先的に使われるのか」と不満を口にしていたのをよく覚えている。
移民・難民の増加によって不利益を被っていると考える国民が増えるのも何ら不思議ではない。そしてそのはけ口がスタジアムに、ひいては社会に向けられているのではないか。
「スウェーデン・モデル」として他国が羨望する社会制度を作り上げてきたスウェーデンだが、いまでは移民問題のひずみが露呈されてしまうなど決して少なくない問題を抱えている。今日ではOECD(経済協力開発機構)加盟国のなかでも格差の拡大がもっとも著しく進んでいる国になってしまった。
今回のサポーター暴行死事件を含む近年の観客による不祥事は、スウェーデンサッカー界だけではなく国全体の問題としてとらえることも必要だ。
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