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あるサポーターの死から考える。スタジアムの厳罰化で暴力・差別はなくなるのか?

text by 鈴木肇 photo by Getty Images

移民に寛容なスウェーデンだが暴力問題も

 今日、スウェーデン国内でフーリガンとしてブラックリストに指定されてスタジアム入場が禁止されているのは128人。彼らの平均年収は約16万クローナ(約250万円)で、国民の平均年収である約25万クローナ(約400万円)を大きく下回っている。

 そのため、低所得者こそがスタジアムで問題を引き起こす諸悪の根源だとして、彼らを締め出す目的でチケット代の値上げを求める声も出ている。

 こうした対策はもちろん評価されるべきだし、検討されるべきだ。しかしながらフーリガンをスタジアムから排除したところで、フーリガンが消滅するわけではない。「サッカーは社会を映す鏡」と言われる。

 先月、浦和レッズのサポーターがスタジアムに「Japanese only」と書かれた横断幕を掲げたことについて米ブルームバーグが民間レベルの右翼化の一例として指摘した。

 スウェーデンでは近年、移民問題などに絡んだ暴力事件が多発している。昨年12月には、ストックホルムのシャルトルプ地区で反差別デモを行っていた団体に対して極右団体が襲い掛かり、警察官を含む4人が負傷。

 その約半年前には同じくストックホルムのヒュースビーという移民地区において、刃物を持った高齢男性を警察官が射殺したことが引き金となって多数の若者が警察に対して暴徒化し、警察署や学校が破壊されるなど暴動が起きた。

 欧州各国が移民・難民受け入れを抑制するなか、スウェーデンはいまも人道的な立場から受け入れを続けている。最近の例では、内戦が起きたシリアからの避難民を希望者全員受け入れると発表した。

 今日では外国のバックグラウンドを持つ人の割合は全国民の約2割にのぼっている。彼らは無料でスウェーデン語の授業を受けることができ、さらには母国語の教育も充実している。少なくとも制度的には外国人は手厚く扱われているといっていいだろう。

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