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あるサポーターの死から考える。スタジアムの厳罰化で暴力・差別はなくなるのか?

スウェーデンリーグでサポーターの死亡事件が起こってしまった。だが、唐突に起こったわけではなく、予兆はあったという。国内では厳罰化の意見も出ているが、果たしてそれが根本的な解決につながるだろうか。

text by 鈴木肇 photo by Getty Images

“普通の”サポーターの死

 誰もが待ち望んでいた開幕戦で、悲劇は起きた。スウェーデン1部・アルスベンスカンの第1節、ヘルシンボリIF対ユールゴーデンIFの試合前に両チームのサポーターが衝突し、ひとりのユールゴーデンサポーターが死亡した。

 命を落としたのはストックホルム在住の43歳男性。4人の子どもを持つ父親だった。この男性はヘルシンボリで観光名所と言われるシェーナンの近くで乱闘に巻き込まれて頭部に重傷を負い、病院に搬送されたが死亡が確認された。

 試合は1対1で迎えた前半40分過ぎに中止となった。男性の死を知ったと思われる複数のユールゴーデンサポーターがピッチに乱入し、そのあと同チームのウルトラスが陣取る観客席から「人殺し、人殺し」という合唱が起き、警察が関与する事態にまで発展。マルティン・ハンソン主審はこれ以上のプレー続行は不可能として試合を打ち切った。

 現在、警察は捜査を続けているものの犯人逮捕には至っていない。事件翌日、ヘルシンボリ在住の28歳男性が現場に居合わせたとして警察に出頭してきたが、事情聴取の結果、いまは容疑から外れているという。

 スウェーデンサッカー界で暴動によって死者が出たのはこれで2度目だ。最初の悲劇は2002年7月にストックホルムで行われたAIK対IFKヨーテボリの一戦で発生。ヨーテボリのフーリガン団体「Wisemen」に所属していたトニー・デオガン氏が中心部ソーデルマルムでAIKサポーターから激しい暴行を受け、帰らぬ人となった。

 ただ14年前と今回とで異なるのは、デオガン氏が乱闘好きのフーリガンだったのに対し、今回の犠牲者である男性はただスタジアムに行くことを愛する純粋なサポーターだったということだ。それだけに余計に悲しみと怒りは大きい。

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