【第一話】きみの夢はいま罰を置く
Your dream put a punishment now
小学校から中学までほとんど苛められどおしだったうえに母が亡くなるといよいよ戦う気力はなくなり、ぼくは夏休みが来る前に学校へ通うのをやめた。
親戚は母の死因を教えてくれなかったけれど、ぼくは自殺だろうと思っていた。自殺だと保険金はおりないはずなのにおかしいなとは考えたが、のちに自殺でも条件が揃えば保険金が支払われることを知り、この疑問は氷解した。
ぼくを預かった親戚は迷惑そうだった。母は親族内で鼻つまみ者だったらしい。勝手に家を飛び出して子どもをつくり、捨てられても戻るあてもなく、貧しい暮らしに身をやつし、挙句野垂れ死んだ。親戚たちが思い描いた物語は固定された評価となっていて、真偽を知るよしもないぼくに反論は難しかった。
母が残した保険金が、本来はただの厄介者であるはずの、ぼくの身分を担保した。
叔父と叔母が迷惑そうな顔をしながらもぼくの居場所をつくったのはそういうわけだった。あきらかにぼくを嫌っている人間といっしょに住むのなら、俗にいう「施設」に行ったほうがいいやと思ったのだけれど、世間様に顔向けできないとかで家に住まわされ、サッカーをつづけることも許してもらった。
秋になると叔父が突然、勉強しろと言い出した。体裁が悪いから高校に行けとの命令だった。
世間体を気にするのは学校も同じで、変な評判が立つと悪いからと、出席日数を問わずぼくを校長の裁量で卒業させることに決めたのだという。不登校はたいしたテロにはならず、ただごみのように箒で掃かれていくだけなのだ。
高校はしょっぱなから馴染めなかった。五月の声を聞く頃にはまた学校から脚が遠のきかけ、サッカークラブに通うことで校舎から解放される放課後を心の支えに、なんとか通いつづけた。ところが二年の春にそのサッカーでヘマをやり、外に出る気がなくなって、半ばひきこもりに。でもそのときあのひとが――――ぼくを――――――――
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