モイーズはなぜ香川を投入したのか?
ところがモイーズは危険な賭けとも言える手段を選択する。ブンデスリーガを史上最速で制覇したドイツ王者に対し、果敢に前へと打って出た。そして香川は、バイエルンを相手にそのクリエイティビティを発揮する。
左サイドでボールキープすると、ショートパスを繋ぎ、チームにリズムを産み出していく。ボールが回り始める。左サイドをドリブルで突き進む。また右サイド深くでボールキープをしながら、チャンスを作り出した。
そして58分、ルーニーの右のコーナーキックから、ビディッチが頭で先制弾をねじ込んだ。博打は実を結ぶ。この試合を観る限りでは、今やモイーズは香川の能力とポテンシャルを十分に把握している、ということになる。チームにアクセントを加えることが出来るからこそ、香川は先発ではなく、後半からの参戦だったのだ。
それでもゲームを支配したのはバイエルンだった。最終的にポゼッション70%、パス数906本(UEFA公式データ)という数値を残したドイツ王者を率いるグアルディオラは、63分にマンジュキッチをミュラーに代えてピッチへと送り込む。
すると直後の67分に、右のラフィーニャからの折り返しを、マンジュキッチがヘッドで落とす。走り込んだシュバインシュタイガーが、ダイレクトで同点弾を突き刺した。リスクを負ったがゆえの被弾だった。