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2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第6回 高木善朗(清水エスパルス)

大きかった父の存在。三兄弟が掴みとった自分たちの価値

 サッカー選手が育っていく過程では、知識や理論よりも「情」に接することが大切な季節がある。多角度からのアプローチを可能にするコーチングスタッフの層の厚さこそが、かつての東京ヴェルディが有していた財産だった。

 古巣の東京ヴェルディとは、開幕前の練習試合で対戦した。

「率直に巧かったです。ユース育ちの選手は、要所要所で独特のテクニックがある。たとえば、ふつうなら切り返さないところで、切り返してくる。左に行くと見せかけて右に動き、やっぱり左にコースを取る。そうそう、おまえたちはそうだよなと思いながらやっていました」

 そんなふうに後輩のプレーを語る高木はうれしそうだった。そこには弟の大輔(東京ヴェルディ)の姿もあり、兄の俊幸(清水エスパルス)とともに高木三兄弟のそろい踏みとなった。

「大輔もいいプレーをしていました。あとは場数を踏んでいくことでしょうね。試合に出続けること、自分が点を取って勝つこと、足りない部分を知ること、すべてが経験になる」

 父は野球解説者の高木豊。80年代から90年代にかけ、大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍し、走攻守の三拍子がそろった好打者として知られた。同じスポーツ界で生き、破格の親を持つがゆえの苦しみはあったに違いない。

少年時代からプロという価値基準を座標軸に邁進し、「あの」が冠せられる高木三兄弟にはその意味が多分に含まれていた。しかし、現在では説明がほぼ不要となり、補足程度の扱いだ。それは彼らが実力で掴み取ったものである。

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