ヴェルディからオランダへ
見慣れないオレンジのシャツを着ていても、そのプレーはすぐに目に留まった。機敏な身のこなし。左右にせわしなく首を振って状況を把握し、頭では2、3秒後の世界を見ている。高木善朗(清水エスパルス)。2月25日、海っぺりにある三保グラウンドは、かすかに潮の香りがした。
18歳の初夏、高木はオランダに渡った。2011年6月、東京ヴェルディからFCユトレヒトに移籍。同年12月、エールディヴィジ第14節のFCトゥウェンテ戦で初出場を果たし、最終節のローダJC戦では初得点をマークしている。
1年目から15試合1得点6アシストの成績を残した。2年目の2012‐13年シーズンは故障の影響もあり、7試合の出場に終わった。そして2013‐14年シーズンは12試合に出場し、昨年12月、清水からのオファーを受け、再びJリーグに活躍の舞台を移した。
オランダでの2年半で、通算34試合1得点。この数字をどう振り返るのか。
「まぁ、良くはないですね。最初からとんとん拍子にいくとは思ってなかったですけど、1年目の途中から試合に出られるようになり、やれるという手応えを得てからはもっと試合に出たいと欲するようになっていった。
2年目は肝心な時期にけがをしていた印象があります。調子が上がってきて、いよいよ試合に出られそうだというタイミングで左手首の骨折や肉離れでやり直しになってしまった。いろんな経験をしました。けがによる長期離脱はもちろん、試合に出られない、出られても途中出場ばかりだったのは初めてだったので」
ユトレヒトでは、主に左のウイングやトップ下でプレーした。
「オランダのスタイルは明確です。サイドに展開したら1対1で勝負し、中の選手はクロスを待つ。まずは個の突破力、1対1で勝つのを前提に戦術が組み立てられている。僕の場合は中央でも仕事ができる特長を出すように監督から言われていたので、ワンツーで中に入っていったり、ドリブルでカットインしてシュートという形が多かったです」
海を渡って奮闘する高木について、かつてのチームメイトは仰ぎ見るように語っていた。