「読むサッカー」をもっと自由にする企み
本日より、サッカー近未来小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』の連載が始まる。ここでは、フィクション初挑戦となる、フリージャーナリスト後藤勝(ごとうまさる)自身による本作品のコンセプト紹介を掲載。さらに『エンダーズ・デッドリードライヴ』連載特設サイトへと進み、本篇をご一読いただきたい。
『エンダーズ・デッドリードライヴ』コンセプト―前口上に代えて
「読むサッカー」をもっと自由に拡張したい。
そんな願いから生まれたサッカー小説が『エンダーズ・デッドリードライヴ』です。
生活のなかにあるサッカーのディテールに説得力を持たせながら、フィクションとしての面白味を失わない。競技のリアリティと物語のダイナミズムのどちらが欠けてもサッカー小説は成り立ちません。
本作は国内のプロリーグを主な舞台としながら地続きである社会人、女子、育成とのつながりを保ち、薄っぺらい表層的な反抗のストーリーに終わることなく、サッカーに携わる人々にとっての「ゴール」とはなんなのかを探っていきます。
サッカー小説のポジションを確保し、サッカー書籍をより充実させるために、企画の立ち上げから筆を走らせること五年目、ようやく世に出ることになりました。
スポーツのみならず日本全体にとっての起爆剤となるかもしれない東京オリンピックまであとわずか。その先の2030年もあっという間でしょう。ならば少なくともそこまでは、サッカーに携わる人間が、一度未来予想図を描いておいてしかるべきです。
Jリーグが2ステージ制への移行を発表して喧々諤々の論争を巻き起こしたように、そしてワールドカップが夏から冬へ、ACLが春から秋へ、カレンダーの移動を検討しているように、サッカー界の移り変わりは早くなっています。
サッカーだけではありません。ジャスミン革命に端を発するアラブの春が少なからぬ変化をもたらしたあとも、ウクライナやベネズエラから反政府デモの様子がリアルタイムで飛び込んできます。このような時代に、ただのほほんと、サッカーの内輪をたこつぼ的に描くという選択はできませんでした。
社会の上からも下からも変革を求めた先の2029年はより規制が緩和され市場が流動的となり日本でもビッグクラブが誕生する余地が拡がっているかもしれません。いっぽう、倒産するクラブが続出、汲々とした経営を強いられるクラブの苦しみが増しているかもしれません。
強くなればなるほどより高みをめざす欲求も強くなり、苦しめば苦しむほど答えを求める姿勢も真摯になるでしょう。おそらくそこにサッカーの物語を描くスペースが生まれるはずです。
こうして必然的に『エンダーズ・デッドリードライヴ』の舞台は2029年の東京になりました。端境者たちの決死行がどうなるか。じっくりとお楽しみいただきたいと思います。
二〇一四年三月 後藤 勝
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連載『エンダーズ・デッドリードライヴ』特設サイト
“読むサッカー文化”に新しい風を吹かせる、近未来サッカー小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』刊行プロジェクト!
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