財政悪化の状況下でもうかがえない危機感
まず驚いたのは、市民に危機感が見えないことだった。人々は日がな一日、カフェでゆるりと時間を過ごしている。夕方になってもカフェでの優雅な談笑は続き、21時近くになってようやく夕食をとるというのがギリシャの人たちの生活サイクルだった。失業率の高さを嘆く声は、別世界の話のように感じられた。
ラテンの気性が“熱さ”よりも“怠惰”として表れるのが、ギリシャ式なのかもしれない。気づけば、坂田の家の近くでは収集に訪れないゴミが街角の一角を占め始めた。タクシーもストライキへと突入し、日本では目にしない光景が、次第に坂田の目の前に浮かび上がってきたという。
確かに財政危機の影はうかがわれたが、街中では騒動など起こったりはしないところに、のんびりした国民性が反映されているようだ。それは、プロのサッカー選手も例外ではないという。
国内リーグ上位に入ればチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの出場権も得られ、国外のビッグクラブ移籍も日本よりはずっと近いはずだ。
だが、「ガツガツ感が選手にはないんですよ」と坂田は語る。
「日本人に近いというか、ギリシャ人には『遠慮』の気持ちもあるように感じました。若手もおとなしくて、率先してチームの荷物を運んだりと、日本ほどではないけれども先輩・後輩という関係がしっかりしている」
欧州のチームの練習と聞いて想像するような、紅白戦からの削り合いもない。そうした激しさを見せるのは、ブラジル人やスペイン人といった他国からの助っ人に限られたという。
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