「遠藤さんはもう比べるに値しないくらい、格段にかけ離れている」
ブラジルW杯アジア3次予選をウズベキスタンに次ぐ2位で辛うじて通過したザックジャパン。本田圭佑不在の中、北朝鮮、ウズベキスタンとのラスト2連戦で連敗したことは、チームに重くのしかかった。
ザッケローニ監督も戦力底上げが必要だと実感したのだろう。ウズベキスタン戦から約2ヶ月後の2012年4月下旬、国内組の有力選手を集めて千葉で3日間の強化合宿を実施することにした。
遠藤保仁、今野泰幸や前田僚一ら常連組が呼ばれる中、新顔として注目されたのが高橋秀人だった。2010年に東京学芸大学からFC東京入りした彼は、持ち前のインテリジェンスとボール技術とパスセンスの高さ、ボランチとセンターバックの両方をこなせるユーティリティ性を武器に徐々に頭角を現した。
J2で戦うことになった2011年には32試合出場4得点と完全に主力に成長。その姿がイタリア人指揮官の目に留まったのだろう。
この合宿は3-4-3の刷り込みにほとんどの時間が充てられ、多くの選手たちが戸惑いの表情を浮かべる中、高橋は頭脳派らしい一面を見せ、黙々とプレーしていた。
「プレーの選択肢をたくさん作っておいた中で、自分にとって一番いい選択肢を瞬時に判断して切り替えるというのが自分に足りないところ。それを持っている代表選手が遠藤選手、中村憲剛選手、柏木(陽介)選手だと思う。彼らは前が空いててもチームメートを落ち着かせるために横パスも出せるんで、そういういい部分を盗みたいです。
遠藤さんはもう比べるに値しないくらい、格段にかけ離れていると思うんで、かなり意識を高くしてやらないと到底、到達しないと思います。一緒にやることで1つひとつ吸収していきたいと思います。
似てるところもある? それも全然おこがましいというか、恐れ多いというか、比較されるような選手じゃない。僕は謙虚に自分の足もとを見て、一瞬一瞬を大切にプレーしていきたいです」