レシフェの人々はコートジボワールびいき?
明治時代に始まった日本の移民政策により、ブラジルには多くの日系ブラジル人が暮らし、コミュニティーを築いている。日系人の歩みについて知りたければ、垣根涼介の『ワイルド・ソウル』(新潮文庫)をお勧めする。フィクションではあるが丹念な取材に基づき、目を覆いたくなるほど残酷でむごたらしく、それなのにとても美しい物語だ。
ブラジルは日本と縁が深く、親日家も多い。一説によると約150万人と言われる日系人のアシストを受け、ホームのような心持ちで大会を戦えるのではないかと私は安直に考える。
「それはどうでしょうかね……。日系人が多いのは南部のサンパウロのほうなんです。北部はアフリカ色が強い。第1戦のコートジボワール戦が行われる会場はレシフェ。アフリカ系ブラジル人が多く、かつ気候も近いコートジボワールのほうが有利かもしれませんよ」
本稿の締めに、6月に意気揚々ブラジルに乗り込む日本のサポーターに向けて、稲川氏と亘氏からの談話を紹介しよう。
「危険の予防は、ごく当たり前のことを心がけること。貴金属類は見せない。カメラをぶら下げない。野宿なんてもってのほか。また、常に相手との駆け引きがあるのがブラジルの文化。油断はできないよ。だから、彼らはサッカーが巧い」
と語る稲川氏。年に3回はブラジルに渡り、これまで警官と強盗の銃撃戦を目撃したり、タクシーに乗って身ぐるみを剥がされそうになったこともある。タクシーで連れ去られそうになったときは、現地の仕事をサポートする女性スタッフが異常に気づき、「このまま警察に行くか、それとも料金をダンピングするかどっちがいい? あなたが決めなさいよ」と逆に脅しをかけたそうだ。
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