「セレクシオナドール(選ぶ人)」代表監督の仕事
最後に指導者として言及しておきたいのが、代表監督の仕事について。
代表でもクラブでも「監督」と呼ばれる日本とは異なり、スペインでは代表監督を「セレクシオナドール(選ぶ人)」、クラブ監督を「エントレナドール(トレーニングする人)」と表現する。
一般的に知られている監督の仕事はクラブの監督たるエントレナドールであり、それは1シーズン、長い時間をかけてチームのコンセプトと戦術を作り上げていくというもの。一方の代表監督は選手を選び、短期間でまとめ上げて結果を出すことが仕事である。選ぶ権利があるので自分のやりたいサッカーに合わせて選ぶことができるという意味でクラブ監督とは仕事のやり方が全く異なる。
スペイン代表のデル・ボスケ監督は、モウリーニョ(現チェルシー監督)やグアルディオラほどキャラクターの面でも戦術的な革新性でも目立ったものはないが、逆に短い時間の中で選手にある程度自由を与えながらも戦術を熟成させていくことのできるバランス型の監督で、選手選考の面でもバランス感覚に優れている。
11月の赤道ギニアとの親善試合でA代表デビューを飾ったDFマルク・バルトラは2008年のEURO優勝後から続くデル・ボスケ体制で38人目の代表デビュー選手となった。本大会に向けて確定組がメンバーの大半を占める中、デル・ボスケ監督は最終選考で「その時点で一番いい選手を選ぶ」セレクシオナドール本来の仕事もやってのけるだろう。(解説:坪井健太郎)
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