戦術キーワード(1)「エントレ・リネアス」ギャップで受ける動き
現在のスペイン代表の戦術を語るキーワードは3つ。まず紹介するのは、直訳すると「ライン間」という単語のエントレ・リネアスだ。
類似イメージとしては「ギャップで受ける」ことだが、ポゼッション型のスペイン代表の攻撃の組み立てにおいては相手の守備ラインの間に入ってボールを受けることが必要不可欠。対戦相手のシステムに関係なく、サッカーにおいては必ずDFラインとボランチ、ボランチとトップ(トップ下)のライン間が存在する。
スペイン代表の選手たちは必ず各ライン間にポジションを取り、万が一ボールを受けられなければ動き直した上で流動性とモビリティを作っている。わかりやすい例が、ピケ、ラモスというCBから、ビルドアップ時の中盤3選手のポジションの取り方とパスの引き出し方。
対戦相手が4-2-3-1と仮定すると、ブスケッツは相手FWとトップ下の間にポジションを取り、シャビ・アロンソはトップ下(FW)と左サイドハーフの横のライン間にすっと入ってパスを受ける。
4-2-3-1のダブルボランチシステム故にスターティングポジションはトップ下となるシャビがパスを受けるポイントは2つあって、ブスケッツにマークが付いている時には彼と同じラインまで下りてくる。
ブスケッツにマークが付いていなければ、マークを引っ張ってボランチとトップの高いライン間に入る。サイドハーフの選手は、シャビがブスケッツと同じラインに入った時、二人が共に中まで入ってきて相手ボランチの両脇のスペースに顔を出してボールを受けようとする。
スペイン代表におけるシステムとは単なる「スタートポジション」という認識で、CBからビルドアップの配給パスがスムースに出てこないとすれば、中盤より前の選手がポジションや動きを変化させ、それをひっきりなしに連動させながらポジションを重複させることなくバランスを維持しながらポジションチェンジをし、相手を混乱させながら次々とパスコースを作ってパスを回していく。
それと同時に、ボールを保持するためのポゼッションではなく、前進する、ゴールに向かうポゼッションで全体のラインを押し上げるのがスペイン代表の攻撃戦術の特徴だ。