ファーガソンは香川を“使えていた”
“わかりやすい”スタイルは悪い意味で安定をもたらした。ランキングテーブルでは6位や7位を行ったり来たり。単純にクロスを上げるだけの攻撃パターンは実に守りやすい。強豪相手には軒並み敗れ、格下にはポロポロと取りこぼした。そう、かつてのエバートンのように。
ファーガソン時代もいわゆるイングランド流のオーソドックスタイルで戦うことはあったが、“サー”はわきまえていた。守備に難のある下位チーム相手にはポゼッションのできるメンバーで挑み、確実に勝ち点を稼いだ。
香川はそういう意味でも効果的に使われた選手だった。ユナイテッドがポゼッションする展開であればスペースでボールを受ける香川は活きた。ノリッチ戦のハットトリックが象徴的で、ウェイン・ルーニーとのコンビネーションで崩す場面はしばしば見られた。
ところが、モイーズ体制でのサッカーは一本調子であるため、スタイルにハマらない選手は居場所をなくす。香川には豊富な運動量とDFのような守備力が要求され、輝きを失った。現在、同じ苦しみを味わうマタをベンチから見て、香川は何を思うだろうか。
一方の本田の所属するACミランは、ユナイテッドよりも状況は厳しい。緊縮財政によって年々戦力は低下。マッシミリアーノ・アッレグリ監督はそれでもCL圏内を死守し、競争力を維持してきたが、今季ついにタガが外れた。
CLでは決勝トーナメントに進出したが、セリエAでは低迷。CLはおろかヨーロッパリーグ(EL)圏内すら難しい順位で、1月、クラブはアッレグリを解任。かつての“10番”クラレンス・セードルフをブラジルから呼び寄せた。
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