「代表でやれる誇りを大事にしたい」
2012年10月のフランス・ブラジル2連戦で世界トップとの大きな力の差を突きつけられた日本代表。この重要な2連戦に岡崎慎司(当時シュツットガルト、現マインツ)は左足親指負傷のため参加できなかった。
常に貪欲に相手の背後を虎視眈々と狙うこの男の不在はチームの攻撃バリエーションを少なくし、得点への迫力を低下させた。ザッケローニ監督も「裏への飛び出しが足りなかった」と盛んにコメントし、岡崎の復帰を待ち望んでいた。
生粋の点取屋が戻ってきたのは11月のW杯最終予選第5戦・オマーン戦。この時点で3勝1分の勝ち点10でグループ首位を独走していた日本がこの一戦に勝てば、5大会連続の世界切符獲得に王手をかけられる。そういう意味でも期待は大きかった。
中東でのアウェイ戦はただでさえ難しいが、この時期のマスカットは気温35度超の猛暑に見舞われていた。すでに真冬の寒さを迎えている欧州でプレーする選手にとってコンディション調整は至難の業だ。ロシアでプレーする本田などは約40度の温差を1~2日の準備期間で克服しなければいけない。日本が苦戦してもおかしくない状況だった。
けれども、試合前日に合流した岡崎は涼しい顔をしていた。
「思ったより体は重くなかったです。ピッチも全然イメージよりはよかったし、すごい暑さを想像してたけど、少し風もあって涼しかった。明日はどうなるか分からないけど、とりあえずは問題なさそうです」と。
10月2連戦では久しぶりに代表を外から見ることになったが、ブラジル戦の惨敗を岡崎自身も重く受け止めていた。
「僕もみんなと同じことを考えました。やっぱり個の力でできるところをもっと増やさないといけない。僕も負けた気分になったし、頑張ろうと思いました。モチベーションも上がったし、代表でやれる誇りを大事にしたいんで、1試合1試合を大切にしたいと思います。
自分はずっとゴールを狙い続けてますし、絶え間なく動いていれば相手にとって必ず脅威になる。それをやっていきたいです」と彼も改めて気合を入れ直していた。