李へのブーイング。加害者をかばっているような対応
アウェイのG大阪戦でも、ホーム開幕の鳥栖戦でも、李にブーイングが飛んだことは多くのファンが確認している。なかには人間の尊厳に関わるような罵りもあったと漏れ伝わって来る。本来なら公衆の面前で特定人物を罵った彼らは、刑法第231条の「侮辱罪」に問われ、刑事罰に処されてもおかしくない。
4年前の仙台の一件も同様だ。もし浦和レッズが本気で差別主義を斬り捨てる覚悟があるなら、仙台事件の時に犯人を特定公表し訣別するなど、断固たる姿勢を示すべきだった。
もし淵田社長の言葉に嘘がないとすれば「差別意識がなかった」という笑止千万な言い訳を黙って受け入れ、さらに突っ込んだ調査もせずにリーグに報告をしたことになる。自分のクラブの大切な選手が侮蔑されたのに、むしろこれでは加害者側をかばっているようにも見える。結局最優先したのは、クラブの体裁なのだろうか。
今まで浦和には、多くの外国人選手が加入しチームを牽引してきた。ブッフバルト、ポンテ、ワシントン、エメルソン…、帰化選手としては闘莉王も活躍したが、ブーイングや罵声を浴びたという話は聞かない。
「Japanese only」が、欧州や南米に向けられたのではないことは明らかで、そういう意味でも非常に性質の悪い「人種差別」だと断じるべきだ。
淵田社長は「クラブの危機だ」と話した。だが真実を知りながら声を挙げる者がいない体質のままで、この重大な危機を乗り越えられるのだろうか。今こそ必要なのは、親会社から束の間に訪れる社長ではなく、裏表なくクラブ建て直しに心血を注げるリーダーではないだろうか。
実は浦和レッズを最も切実に救い上げようとしたのは、敢えて「無観客試合」という重い罰を与えたJリーグの村井満チェアマンだったのかもしれない。
※当初、原稿には『月刊浦和レッズマガジン』を「浦和レッズの公式マガジン」と記載しておりましたが、「公式」ではありませんでした。浦和レッズ、ならびに『月刊浦和レッズマガジン』関係者の皆様にお詫び致します。
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