かつてのヒデを彷彿。アクセントになりうる野津田岳人
そうしたビジョンは高校、大学時代から持っていたと考えられるが、川崎が目指す攻撃スタイルの中で大久保や中村憲ともイメージを共有しながら、最短距離で相手のDFが守りにくそうなポイントに入っていっている。
その彼が日本代表の攻撃陣と組んだら、どんな化学反応や相乗効果が生まれるのか。そしてコートジボワール、ギリシャ、コロンビアの強靭なDFに対して、どのような得点の可能性を作り出せるのか。そうした未知の期待感を抱かせてくれる選手だ。
[アクセント]として面白いのは19歳のMF野津田岳人(広島)だ。左足はパスもシュートも超一級だが、今年のゼロックス・スーパーカップで見せたように、場合によっては右足でも決定的な仕事ができる。
細かいつなぎのパスもハイレベルに繰り出しながら、普通なら厳しいだろうと思う様な場所に絶妙のタイミングと精度で通してくる。目の前の敵を抜くパスだけでなく、速い弾道で守備網を一気に突き破る様なスルーパスも得意としており、そのプレー志向とキックのフォームは元日本代表の中田英寿をフラッシュバックさせる。
野津田で筆者が思い出すのは2012年の11月にUAEで行われたU-19アジア選手権だ。主力として期待された野津田だが、大会中にコンディションを崩し、U-20W杯の切符をかけた準々決勝のイラク戦はリードされた終盤に投入されたものの最後まで精彩を欠き、日本代表は無念の敗退。試合後、野津田は打ちひしがれた様な表情で「この悔しさはJリーグで晴らしていきたいです」と語っていた。
そこからしっかりと精進して、広島の主力にまで上り詰めてきた野津田は年齢的にも、向こう10年の日本代表を背負って行く可能性がある選手。もちろん同年代には南野拓実(C大阪)、岩波拓也(神戸)、久保裕也(ヤングボーイズ)ら楽しみな選手たちが揃っているが、3ヵ月後のW杯でチームにプラスの変化を与えるタレントとして、誰か選ぶとしたら野津田を推したい。