「シュートを見た瞬間、『こえたな』と思った」
1点ビハインドで迎えた後半12分、右からの鋭いパスをペナルティエリア前でトラップ。このとき、佐藤の背中には川崎のDF・ジェシがついており、いわゆるゴールに背を向けた状態だった。傍目にはシュートを選択できる状態ではなかったが、そこでボールを浮かせて、左足での反転ボレーを放ったのだ。
ボールはゴールマウスに向かったものの、その軌道は明らかにゴールの頭上を超えるかに思えた。しかし、風の影響を受けたボールは勢いが失速。結果、絶妙な軌道を描いて、奇麗にゴールの左隅に吸い込まれていったのである。
森保監督もチームメート驚いたスーパーゴールだったが、呆然としたのは、川崎フロンターレの選手達だ。「シュートを見た瞬間、『こえたな』と思った」と中村憲剛がいえば、井川祐輔も「あれはみんなコースを外れたと思ったはず」と言い、対峙していたDFのジェシは「佐藤選手があのようなマジックのようなシュートを決めて試合が難しくなったが…」と、「マジック」と形容。
ただ見送るしかなかった川崎のGK西部洋平は、「打たれた瞬間、完全に枠を外れると思ったし、一回枠を外れてると思います。自分の感覚で言うと、ボール2個分は外れていました」と、自身の経験から完全に見切っていたはずのシュートだったと証言。
西部はJリーグ268試合出場のキャリアを誇るベテランである。「たぶん寿人のつま先に当たって、ナックルボールのようになっている。そこで風が吹いて、一回ボールが止まって、そこから落ちていったような感じだった」と、あの軌道を冷静に分析していたのはさすだが、彼の選球眼を持ってしても、驚きを隠せない軌道だったようである。
第2節にして今シーズンのベストゴールが生まれたのかもしれない。
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