「僕は(ミランで)全く別の次元の問題を今、抱えている」
「(それは時間がかかる?)そうでしょう。でも代表でもいろいろ時間がかかったのはみなさんもご存じでしょう。そういうのを蹴散らしていって結果を出さないことには、この世界では生き残ってはいけない。大博打を打っているつもりです」と本田は周りからの誤解や偏見をあえて覚悟している。
やせ我慢をして自分のスタイルを押し通しつつ、ミランで確固たる立場を勝ち得ようとしている。実に不器用なやり方ではあるが、それが本田圭佑の哲学であり、信念に他ならないのだろう。
クラレンス・セードルフ監督就任後は、本職でない4-2-3-1の右サイドやボランチで起用されている本田。慣れない役割への戸惑いや周囲との連係の難しさもあり、ミランでの苦労は相当なものがある。この日、ザックジャパンで不動のトップ下として攻撃のタクトを振るってみて、彼の中で改めて思うことがあったという。
「僕は(ミランで)全く別の次元の問題を今、抱えている。ここ(代表)でやっているのとはまた違うことがチームにはあるんで、その壁としっかり向き合いながら、新境地にたどり着きたいなとは思っています。
正直、僕自身はトップ下のDNAを持っているし、トップ下は自分の家みたいな感じで、やっていて心地いいわけですよね。だけど、違う環境、違う国でやっているわけですから、いろんな問題がある。心地いいだけだったら動かない方がいいわけで、心地悪さをいかにポジティブに捉えるかだと思っていますけど」
こうやって現実をしっかりと見据え、問題をクリアしようという前向き姿勢を貫くことができれば、彼の未来はきっと明るい。我々にそう信じさせてくれる、約11分間に渡る、本田の力強い言葉の数々だった。
母国に戻り、思いのたけを存分に語ったこの男は再び海を渡り、異国の高い壁に挑む。
【了】