「日本人は責任感が強い。だがサッカーでは……」
宮本:日本人が目指していくサッカーについて、オシムさんはどう考えますか?
オシム:私が日本にいた頃、最も感心できなかったのは、多くの選手が漠然とプレーしていたことだ。そして、プロサッカー選手として許されない種類のミスを繰り返していた。
ジェフで最終ラインのポジションに、ナカニシ(中西永輔)という選手がいたが、彼はボール遊びが好きだった。最終ラインで、気分良くボールと“じゃれて”いた。ところがミスをしてボールを失い、失点した。しかも、二度同じミスをした。どうしてなのか理解できず、頭を抱えたよ。
日本人は一般的に、責任感が強い。日常生活では自分に対して厳しく、社会に対する責任感もある。しかしサッカーでは違う。ミスをする。それも不必要な場面で、たくさんの間違いを繰り返す。意味もないつまらないミスから、失点する。その原因は、よく言われる表現に当てはめれば「プレーに参加していない」からだ。
グランドに遊びで立っている。監督にとっては遊びなどではないのに。サポーターだって、チケット代、交通費をかせぐために働いているのに。何かが間違っている。
細かなつまらないミスが多い。その原因は、トレーニングをしっかりやっていないからだ。面白くない練習は、まじめにやらない。ジャグリング(リフティング)など試合では絶対使わないスキルばかり練習している。
そして問題は、必要な時に集中できないことだ。試合でミスをしないための集中力がない。そのミスのおかげで、リーグ優勝のタイトルを逃したこともある。私の監督一年目のシーズンだ。
失点シーンを分析して、自分たちのミスが原因で負けたことが分かった。市原で、3試合も試合終了寸前に失点して負けた。もう主審が笛を吹いて、ロッカーに引き上げる時間に失点したのだ。一年間、そのために努力してきたのに、試合終了直前にだれかが“寝ていた(集中を欠いていた)”。そのせいで負けたのだ。
プロとして普段からいろいろ努力してきて、最後の瞬間に、つまらない、ほんの些細なことでミスをして、全部を台なしにした。安易。ノンシャラン(無頓着)。不注意。ドリブルがいけないわけじゃない。最終ラインの選手がドリブルして、相手に取られて失点するのが問題なのだ。