絶大なる「J1昇格効果」の中で
「ヴォルティスJ1昇格経済効果50億円」
「ビジター客急増。集客面で昇格特需」
「J1昇格おめでとう」の幟(のぼり)が並ぶ鳴門市、徳島市を含めた徳島県内に届く地元紙・全国紙地元面には近年の日本では考えられない景気のいい数字や言葉が並ぶ。
事実、J2・9年目で四国初となるJ1昇格を果たした徳島ヴォルティスに対する地元の期待は絶大だ。昨年の同時期には話題にすら上らなかったサッカーの話が街にはあふれ、ホーム開幕戦となるJ1第2節・C大阪戦はW杯南アフリカ大会得点王のFWディエゴ・フォルラン(ウルグアイ代表)登場の影響も加わり既にチケット完売。これぞ「J1昇格効果」そのものである。
が、上げ潮ムードも当の徳島が成績を残してこそ。1年でJ2に逆戻りとなれば「勝ち馬にしか乗らない」県民性を鑑みれば、たちまちクラブから人たちは離れていくことだろう。すなわち徳島にとって「J1残留」は目標ではなく「必須事項」なのだ。
そんな内外の荒波にどう対するか。そこで「15位以内」を掲げる就任3年目の小林伸二監督は、あえて大型補強に背を向け、現有戦力をほぼ保有したまま臨もうとしている。それはなぜか? そこには、チームの生命線となる「独特の守備戦術」レベルを維持する狙いがあるからだ。
小林監督が山形監督時代から志向する守備戦術は端的に表せばブロック戦術。敵のボールや人の動きに対し自分たちが隊列を崩すことはない。常に味方同士等間隔を保ちながらパスコースを限定。オーバーラップに対しては人の受け渡しで対応する。
小林監督指揮下の選手たちはまず、この考え方と動き方への対応が求められる。すなわち新戦力がこの守備戦術を短時間で理解するのは簡単ではない。となると彼らの居場所は、自然と既存戦力が彼らをコーチングなどでカバーできるポジションに限られてくるということだ。