キーマン、家長と橋本は諸刃の剣
大熊監督は、大宮を指揮するにあたって、伝統的な堅守からのカウンターを踏襲しつつ遅攻でボールをつなぐことによって攻撃の幅を持たせようと試みている。
この遅攻でキーマンとなるのが新加入の家長だろう。キープ力があり、タメを作ることによって全体の押上を促せるし、突破力のあるドリブルで中央から崩す事も出来る。最も懸念されるのは運動量の少なさだ。
大熊監督は、攻撃の選手にも献身的な守備を求めることで知られるが、05年のワールドユース(現U-20W杯)で指導を受けているだけに互いの特徴は把握している。何よりも、大熊監督は05年当時「唯一世界に通用する選手」と絶賛。今回の移籍も監督の強い要望によって実現しただけに、これまで発揮しきれていないポテンシャルが一気に開花する可能性は十分にある。
さらに、中盤の攻撃的なポジションには水戸ホーリーホックから橋本晃司を獲得。橋本は、本田圭佑が家長との競争に敗れ、ガンバ大阪ユースに上がれずに進学した星稜高校時代の同級生。スルーパスにミドルシュート、フリーキックといった足元のスキルは一級品のまさに“ファンタジスタ”。
家長と組めば、多彩な攻撃を演出できるはず。しかし、橋本も運動量に乏しく、調子の波にムラがあるといった点まで、良くも悪くもファンタジスタの系譜を受け継いだ選手。守備をサボれば厳しく指摘する大熊監督の指導で変化を期待したい。
また、阪南大から特別指定選手として登録されていた泉澤仁も正式に加入。左サイドを単独で突破できる圧倒的なスピードを持つ即戦力で、1年目から野活躍も十分に期待できる。
青木の抜けたボランチには横山知伸を獲得し、カルリーニョスが期限付き移籍から復帰した。豊富な運動量と高精度の縦パスでカウンターの起点となっていた青木の抜けた穴は大きいため、2人が攻守でチームにフィットするかが中盤の質を左右するだろう。