「翻訳サッカー本大賞」を受賞した田邊雅之氏インタビュー
――「翻訳サッカー本大賞」受賞おめでとうございます。
「ありがとうございます。今回、サッカー本大賞にノミネートされた地点でたいへん驚きました。この本は2006年にイギリスで出版された書籍なのですが、当時から自分自身が凄く好きな本で、いつか日本で翻訳出版できたらと思っていました。学研の水野さん(学研教育出版の担当編集)にご無理をお願いして、昨年なんとか実現に至りました」
――発売後の反響はありましたか?
「ボリュームもかなりあるし、正直とっつき難いんじゃないかと心配していたのですが、実際に本を読んだ読者の方から『面白くてすごくいい本だった』というメールをいただいたり、一部の方の間ではかなり評価していただきました。“知る人ぞ知る本”という感じでしたね」
――日本で翻訳出版するにあたって気を配った部分は?
「2006年出版の本なので、データ関係は当時のものになります。論じられているテーマが今に通じているものであれば、敢えて内容を変更せずにやったほうがいいだろうと考えました。ただ、それでも日本人選手の海外進出やザッケローニの日本代表監督就任、ヨーロッパの中でイタリアの相対的な地位の変化など、内容的にカバーしきれない部分が出てくる。そこで新たに触れざるを得ない事実は、新しい章として加筆してもらうことにしました」
――第4部「変わったイタリア、変わらぬイングランド、そして変わりゆく日本」を加筆したことで本作品はどのように変化しましたか?
「日本とイタリアは、根本的にものすごく親和性が高いはずだ、とヴィアリ(ジャンルカ・ヴィアリ/著者)が書いていたのが自分にとってはものすごく大きな発見でした。監督の戦術に徹する日本型サッカーは非常にイタリア人好みなんだと。個のレベルもそうだけど、クロスカルチャーという意味でも、日本とイタリアのサッカーは予想以上に相性がいいという考察が新たに出てきたのは収穫でしたね」
――最後に、読者の皆さんへのメッセージをお願いいたします。
「戦術論もいいけど文化論も面白いよ、ということを伝えたいですね。いろんな視点からサッカーを見る楽しさを知ってもらいたいです。イタリアの映画が好き、イングランドの街が好き。始まりはなんでもいいのですが、そこからもう一歩足を伸ばして、文化や歴史のサブテキストとしてサッカーを読み込んでいくには、ものすごくいい本だと思います」
【了】
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