ペトロヴィッチ監督のスタイルに重要なGK
ただ、山岸はいわゆる“昔ながらの職人”だ。本業のセービング能力では高い資質を示す一方、現役引退した都築龍太氏とポジションを争っていた時から足元のスキルが弱点と見られていた。当然、その短所はミシャサッカーに影響を与える部分であり、実際、ビルドアップの局面で問題が見られることもしばしばあった。
ペトロヴィッチ監督のサッカーにおいて、GKに求められる水準は非常に高い。ゴールを守れるだけでも、ボールを蹴れるだけでも不十分で、攻守両面で卓越したスキルを実装している必要があるが、その条件を見事にクリアしているのが西川だ。
西川は並のフィールドプレーヤー顔負けのボールスキルを持つ。左右両足を遜色なく使え、糸を引くようなパスが出せて無駄にボールを弾ませることがない。飛距離や正確性も非常に高いレベルにある。シュートストップの技術も高く、反応も鋭い。
攻撃でも守備でも計算が立つ現代型GKであることは、日本代表のゴールマウスを任された昨年のオランダ戦でも証明されている。西川の獲得は『11人目のフィールドプレーヤー』と『頼れる守護神』を同時に手にしたようなものだ。
的確な補強と言えば、李忠成を獲得できたのも大きい。1トップには、移籍1年目にして不動のエースに上りつめた興梠慎三がいるが、興梠の存在感がチームで唯一代えが効かないと思わせるほど強かっただけに、彼がピッチにいない時はどうしてもスケールダウンの印象が強かった。
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