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“香川ジレンマ”のデジャヴ。マタ活かせぬモイーズ、無駄だった63億円の投資

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Marc Morris / Kaz Photography

守り重視の試合でマタ。不可解な選手起用

 そんな試合でマタは左サイドで先発。自慢の左足はサイドライン側にあり、直接ゴールは狙えない。縦に抜ける能力はない小さなスペイン人にとってはなかなか見せ場がつくれないポジションだった。

 守りを重視し、ファン・ペルシーの一発に頼るなら、どうして左右にスピードがあるウィンガーを入れないのだろう。バレンシア、ヤング、もしくはバレンシア、ヤヌザイでいいではないか。ファーガソン監督ならそうしただろう。

 しかしモイーズはこの辺が中途半端。守ってカウンターという試合に連携を売り物とする63億円男を押し出した。

 その結果は、この日スカイスポーツの解説者だった元アイルランド代表DFで元リーズ監督のディビッド・オレアリー氏の「I didn’t see him」(私は彼を見なかった)という一言に集約されていたのではないか。

 マタは交代でダッグアウトに下がる瞬間、明らかにモイーズから顔を背けた。あの瞬間、何もできず、自分が完全に消えた試合をどう反芻していたのだろうか。

 ただ、このアーセナル戦で、今のモイーズのスタイル、とくに相手が強い場合には、マタ、そして香川のような、仲間との連携で活きるクリエイティブなタイプは、結果が出せないことがはっきりした。

 この試合でマタが機能しなかったのは誰の目にも明らかだった。ちなみにスペイン代表MFはチェルシー時代、アーセナル戦6試合に出場し、4ゴールを決めている。

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