モンスターになったチームとラームのコンバート
これらはペップが導入したものの、ほんの数例に過ぎない。ドイツの新聞ではペップのチームが示す新たなスタイルは、「11の頭を持つモンスター」と言い表された。その“怪物”はいかなる時にも自在に人相を変化させていき、相手にとっては予測不能なものとなっている。
選手とクラブ幹部のコメントに見て取れる変化はカタルーニャから来た男が施した、ある部分の修正だ。彼がもたらしたのは、「心構え」の変化だった。
その変化が一番印象的だった好例が、フィリップ・ラームである。シーズンが始まって間もない頃のラームは、中盤へのポジション変更というペップのやり方に対して、納得していないように見えた。
夏の時点でこの背番号21は、「僕がこの役割をどれくらい任されることになるかは、これから分かるさ」と話していた。その声音は、与えられた新しいポジションを、本当には喜んでいないように聞こえた。
クラブのビッグボスである会長のウリ・ヘーネスもまた、ラームに与えられた新しい役割には懐疑的な視線を向けていた。
「グアルディオラはまだ、舞台の上で自身が何者なのか証明しようとしている段階だ」
そう話してはいたものの、新指揮官の手法をより理解していたのもヘーネス会長だった。さらにはラームも自身の考えを改めるようになる。シーズンが進むにつれ、ラームの口からは「中盤ではとても良い感じだ」というコメントが聞かれるようになった。
30歳になった“元右サイドバック”は最近、今夏のブラジルでのW杯でも、代表チームの中でもMFとしての新たな役割を担う自分を想像できると強調していた。バイエルン・ミュンヘンのキャプテンは、MFとしての新たな能力を身につけていたのだ。
このラームの変化は、ペップの自信に大きな影響を及ぼした。指揮官はラームを「これまで指導した中で、最も知的な選手」と評しており、今では他の選手たちもグアルディオラへと全面的な信頼を返している。